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Beginning of GenesisGirl section 5

「ようやく見えてきました。あちらが我が街、オーストンでございます。 もうひと息で到着ですぞ」

 ゴードンの言葉に、メイとリコが首を伸ばして前方を覗き込む。

 木立の間から見えたのは、石造りの大きな壁。壁の途中にはとんがり帽子の塔が建ち並び、その奥にも建物の屋根らしきものが目に入った。

 その圧倒的な迫力に、メイが思わず息を呑む。

「すっごい……。こんなのゲームとかアニメの世界じゃん……」

「めっちゃ異世界って感じだね……」

 リコもまた目をパチクリとさせながら、メイの言葉に同意を示した。

 二人の言葉に、ゴードンが少し得意げな表情を見せる。

「オーストンは我らがガオヤーン大公国の中でも最大のタウン。数多くの 神殿が建ち並ぶ『信仰の街』です。また、季節ごとに大きな祭礼が行われることから『祭りの街』とも呼ばれております」

「なんが、楽しそうな街ですね」

 ゴードンの説明に相づちを打つリコ。

 一方のメイは、額の汗を手首で拭いながらふぅと息をついた。

「とりあえず早いところひと息入れたいね。さすがに足がパンパンだわ」

「いっぱい歩いたもんね。私ももうヘトヘトー」

 リコもまた眉をハの字にしながらメイの言葉に同調する。

 すると、ゴードンが恐縮そうに身を縮ませた。

「途中で馬でも借りれれば良かったのですが……。もしお疲れのようでしたら私がお二方をお担ぎいたしますが?」

「いやいや、そこまではいいって。リコ、もう少しなら大丈夫よね?」

「もちろん! メイちゃんこそホントに大丈夫?」

「うん! いつものダンスレッスンのことを思えばまだまだ平気! よーし、オーストンに向けて、レッツゴー!」

 二人はそう声を掛け合うと、互いに手を取り合って歩き始める。

 ゴードンもまた、二人とともにノッシノッシと進んでいった。

 しばらく歩いた三人が到着したのは、赤レンガ造りの大きな門であった。

 その荘厳な造りに、メイとリコは思わずポカンと見上げてしまう。

「もう何度も言ってるけど、やっぱりファンタジー感ハンパないわ」

「異世界に来たって実感がドンドンわいてきますわ」

 やや引きつった様子のメイに対し、リコは目をキラキラと輝かせていた。

 そんな対照的な二人に、ゴードンが話しかける。

「ここはオーストンの玄関となる四つの大門が一つ。その色から『レッドゲート』と呼ばれております。この『レッドゲート』をくぐると、その先がいよいよオーストンの街。メイ様、リコ様、我が街へようこそ」

「うーん、その『様』付けの呼び方、なんかこう、むずがゆいんだけど……」

 メイが頬をポリポリとかきながらリコに視線を送ると、リコもまた困ったように苦笑いを浮かべていた。

 とはいえ、ここで立ち止まっていても仕方が無い。メイとリコはゴードンに促されるがまま門をくぐり、オーストンの街へと足を踏み入れる。

 その眼前に広がっていたのは、活気に満ちあふれた街の賑わいであった。

「うわぁ……」

「すごい……」

 門から伸びる広い通りには様々な建物や露店が建ち並び、人々があちらこちらへと行き交っている。売り買いされているのもの様々で、家具や日用品と思しきものもあれば、不思議な出で立ちの彫像やイラストカードなども並んでいた。

 その中で、メイの心を捉えたのは、ゆらゆらと煙を立ち上らせる一軒の露店であった。

 布製の屋根の下では台の中で炭が炊かれ、その上に串に刺さった肉がズラリと並べられている。脂が滴るたびに真っ赤な炭からジュワッと音が鳴り、煙とともに香ばしい香りが鼻をくすぐってきた。

「うわー、めっちゃおいしそう……」

 思わずじゅるりと舌なめずりするメイ。

 リコもまたお腹を押さえたままじーっと見つめる。

「本当においしそう……、でも私たちお金持ってないよね?」

「これはカバーブですね。良かったら召し上がられますか?」

「いいの!? ご馳走してくれる?」

「もちろんですよ、メイ様。 おーい、おやっさん、二つ頼む」

「あいよー、少々おまち!」

 店主らしき年配の男性はゴードンからコインを数枚受け取ると、ニマッと笑みを浮かべる。そして炭台の上で焼かれていた串を二本手に取ると、甕の中にドボンと浸してすぐに引き上げた。

 とろみのついた濃い赤茶色のタレが肉の周りにまんべんなく絡んだ串を炭台にかざし、遠火で炙っていく。タレが滴るたびに放たれる香ばしい香りが胃袋を直撃した。

 しばらく様子を見ていると、今度はピザの土台部分を四角く焼いたような薄いパンが取り出される。店主はその上にレタスを思わせる緑色の葉野菜と玉ねぎのような白い野菜のスライスを載せると、さらに先ほど炙っていた串を上に載せた。そして、パンで包むようにして野菜ごと肉をつかみ、そのまま串を引き抜く。仕上げに白いソースをかけると、屋根から吊るしてあった紙で手早く包み、二人に差し出した。

「美味いからって、腰抜かすんじゃねえぞ!」

「あ、ありがとうございます!」

余りの手際の良さにあっけにとられつつも、メイとリコが揃って出来上がったばかりの料理を受け取る。

 初めて口にする異世界での料理。正直に言えば、期待と不安が半々といったところだ。

 しかし、とにかくお腹が空いている。鼻をくすぐる香ばしい香り、そして手に伝わってくる熱に、食欲を留めることはできなかった。

 二人は意を決すると、一度互いに視線を合わせてから包みをほどき、同時に頬張った。

 ガブリとひとかじりした後、もぐ、もぐ、もぐと咀嚼。

 やがて二人は大きく頷くと、同時に歓喜の声を上げた。

「んまっ! いや、これめっちゃ美味いんだけど!」

「おいしーっ! えっ、すっごくおいしいよコレ!」

(続)

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