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Novel

小説

アイドル、異世界のステージに立つ 6

創世記少女 -GenesisGirl- written by Swind

Episode 1 〜 アイドル、異世界のステージに立つ(6)

「ジェネシストが圧倒的に少数派……えーと、それってつまり……」

「もしかして、信者が全然いないってことなんでしょうか……?」

 様子を伺うように恐る恐る話すメイとリコ。
 二人の言葉に、ゴードンは力なく頷く。

「残念ながらそう言わざるを得ません」

「そうなんだ……。で、でも、全然いないってことは無いんでしょ?」

「そ、そうよね。だってゴードンさんは少なくとも信者なわけだし」

「そうであればよいのですが……」

 メイとリコへ何か言おうとしたゴードンだったが、その時外からドカドカと何やら雑踏が聞こえてきた。
 窓の外を見ると、一頭の馬と数人の人物が目に入る。その中にはメイとリコが見覚えのある少女の姿もあった。

「あれ? あの子って確か……」

「メイ様、リコ様。申し訳ございません、少々行って参ります」

 ゴードンはメイの言葉を遮るようにしながら席を立つと、すぐに部屋を後にした。
 リコもまた、窓の外を確認してメイに話しかける。

「あの子、お昼に会った歌聖使(アンジェ)の子よね?」

「やっぱりそうだよね。ということは、お昼のことで何かあったのかな」

「それなら私たちも行った方が良いよね、きっと……」

「そうだね。うん……アンナさん、食事中にごめんなさい! 私たちもちょっと行ってきます!」

 メイはそう言うが早いか、部屋の外へと向かって駆け出していった。リコもまたアンナにペコリと頭を下げるとメイの後を追いかけていく。
 二人が玄関につくと、ゴードンと客人が立ったまま話し込んでいた。
 勢いよく玄関へと駆け込んできたメイとリコだったが、淡淡としつつもどこかピリピリとした様子で話すゴードンの姿にピタッと足が止まる。
 すると、二人の姿を見つけた客人が声をかけてきた。

「おお、もしや貴女方がアポステートからこの街を守ってくださった歌聖使(アンジェ)様か……?」

「え、ええと……」

 にこやかな笑み、しかし眼光にどことなく鋭さを感じる客人の気配に、メイは思わずたじろいでしまう。
 ゴードンは一度二人の方に振り向くと、少し思案するようなそぶりを見せてから再び客人へと向き直した。

「左様。こちらのメイ様、リコ様こそ我らが女神アルテュイアの加護を受けてこの地に降臨なされた歌聖使(アンジェ)。本日遭遇したアポステートもメイ様とリコ様による聖歌の加護を賜ることで無事に退治出来た次第……というところだ」

「やはりそう言うことだったのか。上がってきた報告がずいぶん曖昧だったため現場に話を聞きにいったのだが、どうやらうちの者たちよりも先着してアポステートの脅威に対処した者がいると聞いた。もしお前とお前のところの歌聖使(アンジェ)様がいなかったら被害が広がっていたかもしれん。迅速な制圧、感謝する」

 客人はそういうとすっと頭を下げた。その後ろで不服そうにふくれっ面をしていた少女も慌ててそれに続く。

「いやいや、あの場はたまたま居合わせていただけ。それにどちらが手柄を立てたかなんて関係ない。街の人々に大きな被害がなかった、ただそれだけのことだ」

 ゴードンが客人の方を叩き、顔を上げるように促す。すると客人が顔を上げながら笑みを浮かべた。

「お前も相変わらずだな。あの頃からちっとも変わっちゃいない」

「あれ? もしかして二人は知り合いだったり?」

 二人の様子にメイがつい口を挟む。それに反応したのは、客人だった。

「おっと申し訳ない。歌聖使(アンジェ)様へのご挨拶がまだでした。我が名はジョゼフ、ハーモニストが一柱、パクスディア神殿にて戦士隊を率いている。ゴードン殿は元『同僚』だ」

「フン、そっちから見たら『信仰に疑義をいただき、宗旨替えした極悪人』だろ?」

「えっ? 極悪人!?」

 ゴードンから飛び出した思わぬ言葉に、リコが目をパチクリとさせる。
 ジョゼフもまた、その言葉には苦い表情を見せた。

「公式には、な。例えお前がどれだけ優秀な神官戦士だったとしても『異教への宗旨替え』は御法度中の御法度だからな」

「ちょっと待って、異教ってどういうことよ!?」

 ジョセフから飛び出た不穏な言葉に食ってかかるメイ。
 すると後ろに控えていた少女がメイをキッと睨み付けながら口を開いた。

「ハーモニストから見たらジェネシストなんて少数派の異教もいいところじゃない。あなた、そんなことも知らないわけ?」

「はぁ!? なによそれ!」

 少女の物言いにメイが怒りの矛先を変える。
 ずいずいと前に出て行こうとするメイの肩をリコがそっと押さえた。

「えっと、確か……うめちゃんさんでしたっけ?」

「サクラよ!!」

「あ、そうでしたね。サクラさんと呼んでほしい原梅子さん」

「だから本名言わないでって! というか、よく覚えているわよね!?」

「それはさておき、ジェネシストはこの世界では少数派なのかもしれません。しかし、異教という物言いは如何なことでしょうか?」

「異教だから異教なのよ! この世界は平和と安定を司るハーモニストの神々がお支えになっているの。それに属さないジェネシストなんて邪教と一緒、貴女たちは邪教の神の手下に過ぎないのよ」

「ちょっ!?」

「サクラ、いい加減にしないか!!!」

 メイが反論しかけたものの、その前にジョセフが一喝した。

「確かにジェネシストは我々と信仰が異なる。だからといってジェネシストと邪教を一緒にしてはならん!」

「ふん! ねぇ、用件は済んだんだしもう良いわよね? 私、先に外でてるから」

 サクラはそう言うと、ぷいっとそっぽを向いて玄関の外へ出てしまった。
 その後ろ姿を見送りながら、メイがポツリとつぶやく。

「……なにあれ?」

「重ね重ね失礼。あとでしっかりと言い聞かせるのでどうぞご寛恕を……」

「昼の時も思ったが、そっちの歌聖使様は随分元気がよさそうだな」

「まぁな。しかし、気持ちは分かるぞ。これだけ強大な力を持った歌聖使様が現れたとなると心穏やかで居られないんだろう」

「え、それってどういうことです?」

 ジョセフから飛び出た思わぬ言葉に、リコが聞き返す。

「アポステートは強大な力を持っています。たとえ歌聖使様の加護があったとしても通常は一人の戦士が立ち向かうことは出来ません。数人、いや、場合によっては数十人の戦士たちが歌聖使様の加護を受けて初めて対処可能となります。しかし、昼の一件ではお二方の加護を受けたゴードン殿がたった一人で対処した。つまり、それだけお二方の加護の力が強かったという証明になるのです」

「でもそれはゴードンさんが元々強いからとかでは……?」

 メイの質問に、ジョセフは首をゆっくりと横に振った。

「確かにゴードン殿は戦士の中でも猛者の一人に数えられる方。それでもなお、アポステートを一人で対処したというのはおよそ考え得られない事態なのです」

「そう、なんだ……」

 自分たちの力が強いと言われ戸惑うメイ。隣のリコもまた、困ったような表情を見せていた。
 するとゴードンがポンと手を叩く。

「ともかく、被害が大きくなる前にアポステートに対処できた。それでこの話は終わり。後のことはそっちに任せたからよろしく」

「おいおい、これはお前の大手柄だろう? ちゃんとそっちで報奨受けとけよ」

「そうもいかんのだよ、こっちは『降臨式』の前だからな」

「あっ……」

「「こうりんしき??」」

 ゴードンの言葉に、ジョセフがはっと気づいたような表情を見せる。
 一方のメイとリコは、互いに顔を見合わせて首をかしげていた。

(続)

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