Twitter

Novel

小説

novel001

Beginning of GenesisGirl section 2

『We are Genesis Girl. Are You ready? Everybody Scream !!!』

 背後から聞こえてきた叫びのような声に、鬼が思わず振り返る。

 その眼が捉えたのは、岩陰から飛び出した二人の少女の姿であった。

「危ない! 顔を出すんじゃ……」

 少女たちに警告を発しようとする鬼。

 しかし、その言葉を遮るように、彼女たちは拳を天に突き上げた。

 次の瞬間、彼女たちの足下が輝き始める。

「……魔法陣!?」

 その光景に、鬼が大きく目を見開いた。

少女たちがすっと息を継ぐと、どこからともなくメロディが響く。

『Go way』『現代を』『夢を』『左胸に刻むリズム 聞こえているのかな?』

『One day』『瞳』『閉じて』『誰もが迷いの中 生きてゆく意味を探してる』

 まるで魂が揺さぶられるかのような熱く激しい歌声。

 気づけば鬼は、無意識のうちに立ち上がっていた。

 歌声に高揚しているのか、先ほどまでの激しい痛みも今は感じられない。

『近づく 近づく 破壊のパノラマが どこへ向かうの?』

 鬼はふーっと一つ息を吐くと、再び岩熊に向けて剣を構える。

『答えがあるなら 教科書の中じゃ ないーー よーー!』

 じりっじりとっ距離を詰める鬼と岩熊。

 そして、互いの間合いに入った次の瞬間、鬼が大きく前に踏み出した。

『争いはいつも 悲しみの Pain』

『傷つけ傷ついて 虚しさの Rain』

 少女たちの歌が刻むリズム乗せるように、鬼が剣を振るっていく。

 岩熊の強固な岩肌に剣がぶつかるたびに、ガインギーンと鈍い音が響き渡った。

『月曜日が 明ければ 火曜日の朝が来て』

『週末には あなたに 会いたい』

 彼女たちの歌声が大きくなるにつれ、鬼の大剣がいっそう激しく振るわれる。

 それを岩熊が受けるたびに、細かな岩の破片が辺り一面に飛び散った。 気がつけば、岩熊の身体にはいくつものヒビが入っている。

『理想と 現実と 僕らのあす未来』『前見て…….』

『何度も 何度でも 確かめ合う』『走り出せー!!』

 メイとリコもまた、必死に歌い上げる。

 自分たちを命がけで守ってくれている、たった一人のオーディエンスのために、心の底から叫び、そして踊り続けた。

『この時代の 末路に』『後悔など ない様に』

 目を赤く光らせた岩熊が、両腕を大きく振り上げる。

『希望という 名の 花咲かそう』

 次の瞬間、鬼の大剣が岩熊の脇腹を捉えていた。

『夢の続き』

 無数の破片を飛び散らせながら、岩熊がぐらりと身体をよろめかせる

『まだまだ見たいんだ』

鬼が上段大きく大剣を構えると、剣がまぶしく輝き始めた。

『立ち上がれ』

 少女たちの歌声を乗せ、鬼が大きく踏み込みながら大剣を振り下ろす。

『さぁ Look alive !!』

渾身の一撃が岩熊の額を捉えた刹那、ズシーンと重い音が響き渡った。

 少女たちがふーっと息を吐くと、自分たちを囲んでいた光がすーっと消えていく。

 メイとリコは互いに顔を見合わせると、くすっと笑みを浮かべた。

 すると次の瞬間、二人を照らしていた太陽の光が不意に遮られる。

「ありがとう!! おかげで助かった!!」

 上方から響く野太い大きな声。

 視線を上げると、大きな二本の角を生やした血みどろの〝鬼〟が ニヤーッと口角を持ち上げながら彼女たちを見下ろしていた。

 メイとリコが、二人そろって目をパチクリとさせる。

 そして、一瞬早く現実を認識したメイが、たまらず叫び声を上げた。

「い、いやーーーっ!!」

「た、食べないでくださーーーいっ!」

リコもまた、金切り声を上げながらしゃがみ込む。

 へたり込んだ二人は、互いに抱き合いながら身を震わせていた。

「い、いや! 俺はお主たちを食べたりなど……」

 思わぬ反応に、鬼が必死になって否定する。

 しかしその言葉もパニックを起こした二人には届かないようだ。

「来ないで! 近づかないで!!」

「もうやだー! いったい何なのー!」

「落ち着いてくだされ。 ほら、ここから先には行かぬ故」

 鬼は自分の前に足で線を引くと、大剣を背中の後ろに置く。

 そしてそのまま跪くと、左胸に右手を当て、頭を垂れた。

「我が名はゴードン。このたびは危ういところをお助け頂き、お礼の申し上げようもございません。このご恩、ゴードンは一生忘れることはないでしょう。」

 メイとリコが互いに支え合いながら、ゴードンと名乗る鬼の言葉に耳を傾ける。まだ身体の震えは治まらないが、静かにゆっくりと語る鬼の言葉に少しずつ落ち着きが戻ってきていた。

「もっと早く貴女方の下へと向かうことが出来ておれば、かように危険な思いをさせずに済みました。このゴードンの不徳、どのような咎めも受ける所存です」

 ゴードンはそう言うと、一層頭を下げる。

 すると、メイが絞り出すようにして声を上げた。

「い、いや……、ボクたちこそ助けてもらった側だし……」

「そうです。謝るのも、感謝するのも私たちの方じゃないかなと……」

 リコもまた、そーっと様子をうかがいながら声をかける。

 するとゴードンはさらに頭を下げた。もはや角が地面についてしまうほどだ。

「何という寛容なお言葉。本当に、本当にありがとうございます。はっ、こんなところで長居させるわけには参りません。急ぎ、安全な場所へとご案内申し上げます。ご足労をおかけ致しますが、しばしのご辛抱を」

 ゴードンはそういうと、二人にそっと手を差し伸べる。

 しかし、メイは力なく首を横に振った。

「ごめん、ボクたち、腰が抜けて立てないんだ……」

(続) 

Translate »