Beginning of GenesisGirl Section 9
「えーっ、ボクたち、元の世界に帰れるかもしれないのー!?」 テーブルに手をつきながら、勢いよく立ち上がるメイ。 ドンと言う音と共に、スープが入った木の器がピョンと小さくジャンプした。 「ちょっとメイ、そんなんしたらせっかくのスープがこぼれちゃう」 「あ、ゴメンゴメン。ちょっとびっくりしちゃって……」 リコの...
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「えーっ、ボクたち、元の世界に帰れるかもしれないのー!?」 テーブルに手をつきながら、勢いよく立ち上がるメイ。 ドンと言う音と共に、スープが入った木の器がピョンと小さくジャンプした。 「ちょっとメイ、そんなんしたらせっかくのスープがこぼれちゃう」 「あ、ゴメンゴメン。ちょっとびっくりしちゃって……」 リコの...
「狭いところではございますが、こちらの部屋をお使い頂ければと存じます。何かお困りの事がありましたらいつでもお呼びください。それではいったん失礼いたします」 修道女の服装に身を包んだ女性が、まるで祈りを捧げるかのように両手を胸の前で組む。 そして満足そうに笑みを浮かべると、もう一度深々と一礼してから部屋を後...
「じゃあ今のライブも布教活動の一つということなのね」 興奮冷めやらぬ神殿前から離れ、ゴードンの案内で目的地へと向かうリコとメイ。 説歌についての説明をメイが短くまとめると、ゴードンもまたコクリと頷いた。 「左様でございます。説歌(ライブ)により人々の心を引きつけ、信仰をを広げることが神殿の大切な役目なので...
「ふー、ごちそうさまでしたー! おいしかったー!」 メイは串を握ったままの手を胸元で合わせると、満面の笑みを浮かべる。 それを見たリコは、少々あきれ顔だ。 「ちょっと食べ過ぎじゃない?」 「大丈夫大丈夫。今日はいっぱい歩いたり走ったりしたから、差し引きゼロどころかマイナスカロリーだって。ていうか、リコだ...
「ようやく見えてきました。あちらが我が街、オーストンでございます。 もうひと息で到着ですぞ」 ゴードンの言葉に、メイとリコが首を伸ばして前方を覗き込む。 木立の間から見えたのは、石造りの大きな壁。壁の途中にはとんがり帽子の塔が建ち並び、その奥にも建物の屋根らしきものが目に入った。 その圧倒的な迫力に、...
ゴードンが汲んできた水でゴクリと飲み干すと、メイはふうと大きく息をついた。 「えーっと、もう一度確認するけど、ボクたちは『異世界』に来ちゃったってことなのね」 真剣な眼差しを送るメイの言葉に、ゴードンがコクリと頷く。 「歌聖使(アンジェ)様の言葉をお借りすると、そういうことになるかと」 「本当に異世界なんだ...
「ここなら安全なようです。少し休んでいきましょう」 近くの水場まで移動すると、ゴードンが周りをぐるりと見渡してからうんと一つ頷いた。 すると、ゴードンの肩の上に担がれていたメイが、バランスを崩して足をバタつかせる。 「わ、わかったから……」 「早くおろして下さい、もう大丈夫ですので……」 反対側の肩に座...
『We are Genesis Girl. Are You ready? Everybody Scream !!!』 背後から聞こえてきた叫びのような声に、鬼が思わず振り返る。 その眼が捉えたのは、岩陰から飛び出した二人の少女の姿であった。 「危ない! 顔を出すんじゃ……」 少女たちに警告を発しようと...
ギィンギィン、ガンガンガン……。 遠くで打ち鳴らされる激しい金属音を聞きながら、制服姿の二人の少女が岩肌に隠れてじっと身を潜めていた。 互いにしっかりと腕を抱き寄せ、小刻みに身を震わせる。 少女の一人は、膝にじんわりと血をにじませていた。 「リコ、膝、大丈夫?」 「うん、少し擦りむいただけ。メイこそ怪我して...